本記事では Great Western Trail(GWT) 第2版の出荷について考えます.
ルールは Boardgame Arena の Arena モードに基本として,3人プレイを前提とします.
Simmental variant, Balance material quantity, unofficial variant (2/3p) は on/off の区別をしていません.

出荷数と着順の関係性

まず,Arena モード上位プレイヤーを含む卓 (150 戦ほど) での順位ごとの出荷数の累積頻度グラフは次のようになっています

横軸が出荷数,縦軸が累積頻度を表しています
グラフの傾向として次の 2 点読み取れます

  • 順位の高いプレイヤーの方が出荷数が多い
  • 5 回以下の出荷で 1 位になっているプレイヤーは 10% 程度

GWT では

  • 1 回の周回で 建築,牛の購入, エンジンを進める のアクションを取れる回数が限られていること
  • 基本的に戦略は特化した方が強いこと

の 2 点から周回数を増やすほうが自分にとって強いアクションを取れる可能性が高まります.
したがって,出荷数の増加と順位に関係性があることは直感との齟齬はなく,ここでは掘り下げません.

ここでは,1位を目指すにあたって重要な 6 回以上の出荷を行う上での基本的な戦略を考えます.

出荷の基本戦略

出荷数 6 の場合の都市の組み合わせ

6 回以上の出荷を行うためにどの都市へ出荷するのが効率的か考えます

  • 0, 4, 6, 8, 10, 12 (+-0 点)
  • 0, 0, 4, 6, 10, 12 (-6 点)
  • 0, 0, 4, 6, 8, 10 (-12 点)
  • 0, 1, 4, 6, 8, 10 (-9 点)

簡単に考えられるのはこの 4 つですが,基本的に一番得が少ないのは一番下の組み合わせだと思います
6, 8, 10 と出荷することで既に 2 枚の objective を獲得しており,3 枚目の objective が有効に機能することは少ないでしょう
理想は 1 番上の組み合わせですが,10b (4金, 4エンジン,移動4マス) を無理矢理にでも早く建てる戦略などのリターンが大きい物のためには3番目の出荷方法も有効だと思います
10b 戦略だとしても 12 への出荷をすることで移動 +1, 3点の黒 disk を外しながら出荷による減点を最小限にするというプランもありますので 12 への出荷方法を確立することは重要です

出荷数 7 の場合の都市の組み合わせ

出荷数が 1 増えると,より難易度の高い都市への出荷が必要になってきます

  • 0, 4, 6, 8, 10, 12, 14 (+8 点)
  • 0, 4, 6, 10, 12, 14, 16 (+18 点)
  • 0, 0, 4, 6, 8, 10, 12 (-6 点)
  • 0, 0, 1, 4, 6, 8, 10 (-15 点)

現実的にはこのような組み合わせでしょうか
上 2 つの出荷が自然にできれば高得点が期待できます
3 番目の出荷の組み合わせも出荷以外の得点ソースがあればありえる組み合わせだと思います

一番下の出荷の組み合わせはロースコアゲームの時に見られる組み合わせだと思います
GWT は相対的なポイントを競うゲームなので,必ずしも高得点を取る必要はありません
Builder や Engineer を使ったプレイングでは終盤の 1 手番で 20 点近い得点が入ることもあります
そういった行動を防ぐために出荷点を犠牲にしてゲームを早く終わらせるというのは選択肢に入ってきます
一番下の出荷方法では潤沢にお金を獲得できているはずなので,hazard やそれに伴う objective で効率的に得点が稼ぐことを目指せるはずです

出荷数 8 以上の都市の組み合わせ

出荷数が 8 を超えるのは多くの場合対戦相手との差が開きすぎた場合です
大きく差を開けられたプレイヤーはなんとかしてターン数を増やして逆転することを試みます (だいたいうまくいきません)
この場合 14, 16 への出荷が必須となり,それが可能な場合はなにをやっても勝てるようなデッキ or permanent certificate の状態だと思うので割愛します

  • 0, 1, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16
  • 0, 0, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16
  • 0, 0, 1, 4, 6, 8, 10, 12, 14

出荷の順番について

上で様々な出荷の組み合わせを考慮しましたが,出荷の順番も大切です
多くのプレイヤーが最初は 0 の Kansas city に出荷して序盤の体制を整えますが, その後の出荷順序は状況に応じて変わってきます

10 の都市への出荷は step 数を増やす or temporary certificate の上限を上げるために GWT における最初の目標になると思います
そのため達成可能なタイミングでは 10 に出荷するのが定石です

4, 6, 8 はその時に支払わなくてはならない出荷のコストと自分の手札次第のように思われますが,実際には 4 と 6 を先に埋める方が効果的です
これは 4 と 6 を link したボーナスで exchange token を獲得することができるためです
行動に自由の少ない序盤に exchange token を獲得し活用することで,10 の都市への出荷を早めたり,環境を整えるための資金に変換することが可能です

出荷数の増える要因

自然と出荷数が増える Neutral building の配置もあります
雇用のための Neutral building がスタート地点と隣接している場合, 自分で労働者市場をある程度コントロールしながら妨害されずに雇うことができるので出荷数が多くなる傾向があります
その時はゲームが早く終わる,ロースコアなものになると把握して,序盤から細かく得点の獲得をしていくことで有利に進めることができます

各都市への出荷戦略

これまでの分析で 10, 12 の都市への出荷の必要性が確認できたと思います
ここからは各都市に出荷するにあたって何が必要かを整理し,ゲームの中盤の目標を把握します

出荷戦略を立てるにあたって

  • 初期デッキでの手札の最大値は 7 (Black 2, Green 2, White 2, Grey 1)
  • temporary certificate の最大値は
    • 3
    • 4 (白 disk 外し)
    • 6 (黒 disk 外し)

となっていることは把握しておくべき重要情報です

10 の都市への出荷戦略

step 数の増加,temporary certificate 上限の増加のために最初に出荷を目指す目的地が 10 都市です
組み合わせは以下のものが考えられるでしょう

  • Hand value 7 (2, 2, 2, 1) + Certificate 3
  • Hand value 9 (3, 2, 2, 2) + Certificate 1
  • Hand value 9 (4, 2, 2, *) + Certificate 1
  • Hand value 10 (3, 3, 2, 2)
  • Hand value 10 (4, 2, 2, 2)

Engineer 戦略の場合,雇用時ボーナス +1, engine + temporary certificate の Neutral building, permanent certificate の station master といった形で自然と 10 を達成することができます

Cowboy 戦略の場合,4牛を早めに購入しておくことで 4, 2, 2, 2 というラッキーパンチで移動力を増やせる可能性があるので 4 牛を狙うのは奇襲性があって興味深い戦略です
ただ,risk action を絡めた 3, 2, 2, 2 は一番自然な戦略とも言えます

Builder の場合は 3a/b, 4a(5金で hazard 獲得, 追加 2 steps) , 12a(Builder x 1金獲得, 追加 1 step) を risk action で積極的に活用していき,手番を失わずに certificate を獲得していく,あるいは,Engineer や 3牛の購入を絡めていくのが基本筋になるでしょうか
10b の場合は無理やりにでも建ててから考えるということは可能ですが,10a の場合には綿密な都市計画が必要というのが私の結論です
一つ目の station master が permanent certificate の場合,そこだけ少し無理して獲得してから建築に移るというのも有効な手立てだと思います

12 の都市への出荷戦略

12 都市への出荷可能かどうかが出荷点に大きく影響するのは前の章で確認した通りです
組み合わせは以下のものが現実的でしょうか

  • Hand value 7 + Certificate 5+
  • Hand value 9 + Certificate 3
    • 3, 2, 2, 2
    • 3, 3, 2, 1
    • 4, 2, 2, *
  • Hand value 10 + Certificate 2
    • 3, 3, 2, 2
    • 4, 2, 2, 2
    • 4, 3, 2, *
    • 5, 2, 2, *
    • 5, 3, *, *
  • Hand value 11 + Certificate 1
    • 4, 3, 2, 2
    • 4, 3, 3, *
    • 5, 2, 2, 2
    • 5, 3, 2, *
    • 5, 4, *, *
  • Hand value 12
    • 4, 3, 3, 2
    • 5, 3, 2, 2
    • 5, 3, 3, *
    • 5, 4, 2, *
    • 3, 3, 2, 2, 2

デッキ強化なし かつ permanent certificate を獲得していない場合,黒 disk を外して temporary certificate の上限を 6 にしておく必要があります
disk を外す順番を間違えると 12 への出荷が現実的でなくなる場合があるので,それは避けるように行動していきましょう

手札上限を 5 枚にしたところで 5 牛に頼らないと 12 への出荷は難しいので,手札上限を増やすよりは手札が簡単に循環させられるような周回をデザインした方が強いです

14 の都市への出荷戦略

Cowboy 戦略では積極的に出荷したい 14 都市ですが,ここまでくると手札上限が 5 になっていないと厳しいことがわかります
10 都市では step 数を増やす 黒 disk を外しておいて,12 への出荷で手札上限を増やす仕組みにするのが良い循環を作る上で肝要です
Certificate を自然に獲得できる場なら 13 (5, 4, 2, 2) + 1 なども選択肢に入ってきます

  • 5, 3, 3, 2, *
  • 5, 4, 2, 2, *
  • 5, 4, 3, *, *

また初期デッキ + temporary certificate だけでは絶対に出荷できないので,permanent certificate を 1 つ拾えるかどうかは戦略の幅に大きく影響することがわかります

16 の都市への出荷戦略

あまり出荷されない 16 都市ですが出荷できたら気分は良いでしょう

  • 5, 4, 3, 2, 2

とかが現実的でしょうか?あるいは 14 に certificate を足していく作業になると思います
Simmental ありなら 5, 5 とかで入ればなんでもできます