2023年シーズンが始まる前の記事では
- Direction: pull の exit vel. (引っ張った打球の速度)
- Swing/Take の Chase の Run Value (ボールゾーンの球の成績)
の 2 点に着目して活躍しうる選手を予測しました。
注目した選手たちがどのような結果を残したのか振り返っていきたいと思います。
シーズンにおける結果
前回の記事で注目した選手は過去 3 年間の pull の exit vel. が 20 percentile 以上かつ 昨年の chase の run value が下位 20 percentile のプレイヤーでした。
これらの選手の 2022 年から 2023 年にかけてのアプローチの変化、成績の変化を見ていきます。
Name | Pitches | Pull % | Avg. Exit Vel. | xwOBA | xwOBACON | Swing % | Chase |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Jake Burger | 682 -> 2048 | 40.4 -> 45.8 | 90.7 -> 91.9 | .318 -> .359 | .438 -> .469 | 53.8 -> 54.0 | 1 -> -1 |
Teoscar Hernández | 2082 -> 2673 | 38.6 -> 36.6 | 92.6 -> 91.3 | .351 -> .336 | .470 -> .466 | 48.8 -> 53.6 | 4 -> 7 |
Matt Vierling | 1404 -> 2133 | 28.4 -> 32.0 | 91.2 -> 89.1 | .324 -> .322 | .374 -> .371 | 44.6 -> 44.3 | 4 -> 12 |
Trevor Larnach | 724 -> 915 | 38.1 -> 38.9 | 90.1 -> 90.1 | .322 -> .323 | .437 -> .443 | 41.6 -> 41.0 | 3 -> 4 |
Jose Miranda | 1812 -> 545 | 41.8 -> 43.2 | 89.3 -> 87.9 | .317 -> .281 | .358 -> .303 | 51.5 -> 51.7 | 4 -> 0 |
Eric Haase | 1376 -> 1118 | 41.9 -> 38.5 | 87.7 -> 87.1 | .302 -> .253 | .390 -> .322 | 51.4 -> 54.0 | 0 -> 0 |
Oneil Cruz, Tyler Naquin, Kyle Garlick の3名は対象投球数が少なかったので外しました。
xwOBA ベースで見た成績を明確に伸ばした選手は Jake Burger のみで他の選手は現状維持ないしは悪化したという結果になりました。
Jake Burger の結果で見ていくと Pull% を増やし、EV を向上させたということが確認できます。 xwOBACON の数値の向上からもその打球の質が上がっていることが確認できます。 一方で Plate Discipline の質的変化は見られない中 xwOBACON 以上に xwOBA が向上しているので、幸運に恵まれた部分もあるかもしれません。 今年苦手とした offspeed のボールを投手たちがどのように使っていくのか、どのように対応していくのかといったところが見どころになると思います。
Teoscar Hernández の成績低下は対戦相手の Pitch Type の変化が上げられると思います。 今年 4-seam (628) 以上に投げ込まれた Slider (671) は昨年の 551-481 というバランスから大きく変わり、どちらの run value の低下にも繋がりました。 平たく言うとより slider を意識して slider に対して成果が上がらず、4-seam に対しての成果も下げたという状態です。 投げ込まれている zone の変化は見られないので、球種に対する対応次第で今後の活躍度合いは変わっていくでしょう。
Vierling は Fangraphs の記事でも運のなさを指摘されていましたが、それ以上に Pull% の低さが気になります。 2022 年シーズンよりは改善したものの以前として低く、xwOBACON の向上にも繋がっていません。 他にも Vierling は高い GB% (49.1%) にも悩まされており、これが運に左右される部分に繋がっていそうです。 以下の図のように Pull% と Avg LA には一定の相関見込めます。 これは引っ張った際のバットとボールの衝突の仕方が関係しているという指摘もあります(裏付けるにはより詳細な調査が必要となります)。 したがって、Pull% をさらにあげることができれば Vierling の成績は安定し向上していくのではという期待もあります。 Pull% を上げることが意図的にできるのかどうかといったところが今後の注目点の一つになると思います。
Larnach は高い xwOBACON を維持しながらも xwOBA を向上させることはできませんでした。 Larnach は stats そのものは期待できる数値を残しつつも、Breaking, Offspeed のボールに対しての高い Whiff% がどうしても xwOBA の向上を妨げているようです。
Miranda, Haase は苦しいシーズンとなりました。 Swing%, Zone contact と Pull% はトレードオフの関係にあると思われますが、Pull% が上がってこない状態で Swing%, Zone contact も向上しないとなると、単純に投手の球に押し負けたという結果になりそうです。
Conclusion
意図的に変えることができるものとできないものという観点から、EV・Swing% が高い打者に着目して、その成績を分析していきました。 実際には Swing% の変化は見られず、Pull% の割合をあげることに成功した選手の成績向上,そうでない選手たちの成績停滞あるいは低下が確認できました。 今後の発展として
- Swing% の変化させた選手たちの成績を確認してくこと
- Pull% を向上の要因をブレイクダウンし、Pull% が向上する見込みのある選手を探していく
という方向性を考えています。 表に出ている stats だけでなく一段掘り下げた結果が必要とされていると感じました。